筆者は地方の中堅SIerに勤めています。
書籍やネットで調べるとSIerには未来がなく、だんだんと必要とされなくなるのではないかという意見が目立ちます。
(参考) SIerって本当にヤバいの? ひろゆきが語る、業界ごと沈まないためのキャリア戦略
そこで、本当にSIerに未来はないのか、もし未来がないのであれば、SIerに勤める人間は何をしたらいいのかを考えてみました。
SIerとは
SIerを言葉通りにとらえらば「システムインテグレーションを行う会社」で、「システムインテグレーション」は、様々なソフトウェアやハードウェアを組み合わせてシステムを構築することを指します。
しかし、実際にはソフトウェアの組み合わせだけではなく、独自の製品を作って販売することもあれば、オーダーメイドで顧客企業の要望に合わせて0からソフトウェアを構築することもあります。
SIerの仕事の進め方
顧客企業から要望を受け、提案書を提出することから仕事がスタートします。
複数企業でコンペになる場合もあれば、はじめから1社に絞られている場合もあります。
提案が受け入れられれば、必要な人員(リソース)を集めて開発体制をつくります。
必要な人員が足りなければ、他社に依頼したり、派遣を受け入れたりします。
そこから、構築するシステムの目的や大枠などを決めるシステム化構想、システム化の範囲を決める要件定義、画面のレイアウトやデータの定義等を決める外部(基本)設計、プログラムの設計図を作る詳細設計、そしてプログラミング、テスト進んでいきます。
SIerの問題点
SIerのビジネスには複数の問題点があると指摘されています。
国際競争力が低い
今後日本国内の市場は低い成長率が見込まれています。
(参考) 内外経済の中期見通し ~2020年代、3つのメガトレンドと3課題克服で日本は1%成長~ | みずほ総合研究所
日本企業が成長するためには、海外の成長率が高い市場でサービスを提供する必要があります。
しかし海外と比較した場合、日本のIT企業は国際競争力が低く、海外で競合と戦った時にあまり勝てていません。
下記は企業の時価総額のランキングですが、アメリカや中国のIT企業が上位に来ているのに対して、日本のIT企業はソフトバンク3位に入ってるだけです。
(参考) 世界の時価総額ランキング2019・トップ100 | たぱぞうの米国株投資
海外市場で勝てなければ、海外の成長を取り込むことができません。
また、海外企業が日本市場に参入した際に対抗できなければ、国内のシェアまで奪われてしまいます。
成長する市場に対応できていない
価値創造型の仕事への対応
国内のIT投資は、直近では老朽化システムの更新や消費税の対応で拡大が見込まれています。
(参考) 2019年の国内企業IT支出を前年比1.6%増の26.9兆円と予測――ガートナーがIT投資動向を発表 | EnterpriseZine
しかし、長期的な観点であれば、今後求められるのは従来のように 業務の効率化やコスト削減 を目的とした仕事ではなく、新しいビジネスを生み出すようなものです。
そのため、ITサービスへの需要は今後も拡大しますが、SIerがスキル不足のためにその需要に答えられず売上を拡大できないおそれがあります。
SaaSへの対応
これまでシステムは企業ごとにオーダーメイドで構築して納品するのが主流でしたが、クラウドでサービスを提供するSaaSの需要が高まっています。
参考) SaaS市場規模・トレンド徹底解説!SaaS業界レポート
保守コストの削減や、保守にかかわる人員を設計などの上流にシフトさせるためことが、需要が高まっている大きな理由です。
(参考 ) SaaS型ERPの導入で新規導入コスト、保守コストを削減できるって本当? | ITmedia
SIerの主な収入源はオーダーメイドでのシステム構築のため、ビジネスモデルを転換する必要が出てきています。
需要の減少
ビジネス環境が変わる速度が加速し大型案件が減少する見込み
年々ビジネス環境の変化が加速していると言われています。
変化が激しくなると、IT資産に計画的に大きな投資をするよりも、アジャイル開発で小さく初めて、上手くいきそうであれば投資を拡大する方が効率的になります。
しかし、計画的な大きな投資はこれまでSIerの主要な収入源だったため、それが減ることで売り上げが減少しかねません。
内製化の加速
多くのビジネスでITの活用が重要になっているため、自社内でITエンジニアを抱える動きが加速しています。
今ままでSIerなどの外部企業に依頼していた開発を、自社内でこなすようになるため、SIerの売上に影響が出る可能性があります。
SIerのとるべき対応策
複数の問題を抱えている状況で、SIerがとるべき対応はその問題点を解決することです。
海外市場への投資
国際競争力を高めるためには、積極的に海外市場に投資して、自社のサービスを売り込む必要があります。
実際、すでに積極的な海外展開をしている大手SIerがいます。
NTTデータは積極的にM&Aをすることで海外での売上を拡大しています。
利益率に改善の余地はあるようですが、日本のSIerでも海外市場で事業を拡大できる可能性を示しています。
成長市場への投資と組織の変更
価値創造型の仕事や、SaaS等の今後成長が見込まれているビジネスに投資して、成長を取り込んでいく必要があります。
例にあげた富士通以外でも、単に要望を受けた仕事をするのではなく、自ら提案して仕事を創りだそうと取り組むSIerが多く出てきています。
これらの取り組みが成功するかは分かりませんが、成功すれば新たな収益源を生み出す可能性があります。
まとめ
SIerには複数の問題点があり、解決することができずに多くのSIerが淘汰されてしまうかもしれません。
しかし、問題点を解決できれば今後も事業を継続、成長させるチャンスがあると思います。
[…] (参考) SIerに未来はあるのか […]